HSBC調査結果から考える日本の未来
ワースト2はチャンス
今年7月に、イギリスの金融大手HSBCホールディングスが調査した「Expat Explorer Survey」の結果が発表されました。
163カ国・地域の駐在員1万8,059人を対象に行い、「生活」「経済」「子育て」の3項目を総合的に評価したものです。
33ヵ国中、日本はワースト2の32位でした。
出典: HSBC Expat Explorer Survey 2019
ワースト2!
海外駐在員は日本に住みたくない・働きたくない!
みなさんそう思ってるみたいですよ、という結果でした。
しかし、悲観する必要はまったくありません。
むしろこれから日本が取り組むべき課題を示唆してくれています。
ワースト2という結果に意識を奪われるのではなく、改善すべき項目をまずは理解することが大切でしょう。
評価が低かった項目

出典 : HSBC Expat Explorer Survey 2019
下記5項目が特に評価が低かった項目です。
- Ease of settling in (定着・定住度)
- Income(収入)
- Work / life balance(ワーク・ライフバランス)
- Making friends(駐在員の子供が感じる友達の作りやすさ)
- Learning(駐在員の子供向けの学習環境)
この5項目は今後改善していくべき最優先課題と言えるでしょう。
この中で目を引くのは、Income(収入)かもしれません。
国内外の有識者は、日本の賃金水準は世界の先進国と比較して低いと指摘しています。
たしかにそれは否定できないことだと思います。
しかし、この調査の対象となっている海外駐在員は本国企業との雇用契約によって給与が決められていると考えられます。
日本の企業が海外人材を新規に雇用したが賃金が低くて不満を持たれている、という話ではありません。
ですので日本の賃金水準が低いと捉えてしまうのは早計です。
日本社会でのビジネスは魅力がない
この調査の対象になった人材の平均年収は約1,400万円ほどだと言われています。
このクラスの人材が収入に不満を持ってしまう理由は正直よく分かりません。
なぜなら、Disposable Income(可処分所得)の数値からはそれほど強い不満が感じられないからです。
私は Income(収入)に対する不満の原因が Work / life balance(ワーク・ライフバランス)にあるのではないかと考えています。
Work / life balance(ワーク・ライフバランス)のランクは最低です。
かなり強い不満が感じられます。
これは本国や他国で勤務していたときには取れていた Work と Life のバランスが日本では取れないということではないでしょうか。
旧態依然とした日本企業に囲まれてビジネスをしていると Work の時間が長くかかってしまうことがあるでしょう。
長時間労働ではないにしても日本企業とのビジネスには一定のストレスがかかる。
もしかしたら閉鎖性を感じ取っているのかもしれません。
または日本人社員とのコミュニケーションに課題があり勤務時間が長くなってしまう。
そうした大変さは賃金に反映されないため自らの賃金を低いものだと認識してしまう。
つまり「割が合わない」ということなのかもしれません。
賃金が低いと感じる以前に、日本社会でビジネスをすることは魅力的ではないと考えている可能性があります。
「もっとスムーズに仕事ができて給与も良くて余暇も充実させられる国で働きたい。」
贅沢ですね。
そんな国どこにあるの?
それがランキング上位の国なのではないでしょうか。
「日本へ旅行に行くのはいいけど働くことだけは避けましょう。」
調査結果はそう説明しているように思えてきます。
同時に、何を改善すべきか教えてくれてもいます。
ここは日本の未来のために大いに参考にすべきでしょう。
ただ、日本が魅力的だと感じてもらうためにはあまりにも課題が多すぎる。
悲観せず、一つ一つ解決してく他ない。
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この記事の執筆者 |
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西ヶ谷紀之 【 国家資格キャリアコンサルタント・社会保険労務士・行政書士 】 |
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