ヤンゴンで出会った天才少年

天才少年現る

ボージョー アウン サン マーケット

ボジョーマーケットというヤンゴンの市場で声をかけられた。

声をかけてきたのは少年である。

「お兄さん日本人でしょ?」

商売慣れしているので、しばらくスルーして歩いていた。

「ねぇ、日本人でしょ?」

流暢な日本語を操る。

あまりにも日本語が達者なので会話をしてみようと思った。

「君、日本語が上手だね。名前は?」

「ショーヘイ!」

いやいや、それ日本人の名前じゃないの。

もちろん彼にはミャンマーの名前がある。

ミャンマーには日本でいう苗字がない。

彼に興味が湧いてきた。

 

「日本語はどこで覚えたの?」

「お寺でお坊さんに教えてもらった。そのお坊さんが日本に連れて行ってくれたんだ。」

とにかく日本語が流暢だ。

「でも漢字が読めないんだ。漢字は難しいね。」

「漢字が読めなくても、これだけ会話ができることはすごいことだよ。」

と誉めると

「ぼく、English, Germany, Chinese もできるよ。」

驚いた。

年齢は15歳。

市場で客引きをやっている。

ミャンマーはかつてイギリスの植民地だったこともあって、英語が堪能な人が多いと聞く。

だから英語ができるのは分かるのだが、他の外国語はどうやって覚えたのだろうか。

その点を聞いてみると、スマホを使って、語学番組を見ながら覚えたそうだ。

 

自分が15歳の頃、何をしていただろうか?

中学3年生。

そうすると、一応受験生か。

当時は洋楽にハマっていて、勉強もせずに音楽ばかり聴いていた。

ガンズ&ローゼス、モトリークルー、ハロウィン、ホワイトスネーク、メタリカ、ゲーリー・ムーア、ミスタービッグ、ナイトレンジャー、デフレパード、なぜかTNTというバンドも好きだった。

洋楽だからといって英語が堪能になったわけではない。

いや、むしろ1ミリの進歩もなかった。

当時は英語以外の外国語なんて想像したこともなかった。

外国語と言えば英語。

それが全てだった。

考えてみたら、なんて狭い世界なんだ。

 

彼を見ていると、沢木耕太郎の『深夜特急』を思い出す。

シルクロードの交易地で多言語を操る商人が出てきた話があった。

商人は、挨拶や交渉のときに必要な会話をマスターしている。

しかし、読んだり書いたりすることはできない。

あくまで、商売に必要な範囲で話すことができるのみだ。

多言語で話せるというのもすごいと思うが…。

そんな記述があったと記憶している。

 

しばらく彼のドイツ語を聞いたあと、彼は日本語を話し出した。

「日本で働きたい。20歳になったらトヨタの工場で働きたいんだ。」

まるで訴えているように聞こえた。

「君は大学に行って勉強するつもりはないのかい?」と聞くと、すぐ働きたいのだと言う。

いろいろ事情があるのかもしれない。

根掘り葉掘り聞くことは控えた。

 

彼は、私が泊っているホテルの名前や値段を聞いてきた。

隠す必要もなかろうと思い素直に教えると、ホテルの格付けについて話し出した。

そのほか外国人旅行者のことや交通事情のことなどを話してくれた。

なんだかタクシーの運転手と話しているような気分になる。

全然子供っぽくないのだ。

子どもの姿をしているだけで中身はおっさんではないかとすら思った。

 

私は話題を変えようと思った。

「好きな音楽は?」

「さくら。知ってる?」

「もちろん知ってるさ。日本人で知らない人はいないよ。」

日本の代表的な童謡を知っているとはさすがはショーヘイだ。

琴の音色も好きなのだろうか。

彼は高度な教養の持ち主なのかもしれない。

私が関心していると、彼はスマートフォンを取り出して歌い出した。

「さくら~、さくら~、い~ま~さきほこ~る~」

あれ?

これは森山直太朗さんの歌じゃないか。

しかも上手だ。

いい声をしている。

彼はこの歌が大好きなんだそうだ。

 

他に好きな曲があるか聞いてみた。

すかさずスマホの画面を見せてくれた。

そこに写っていたのは…

 

ピコ太郎はミャンマーの若者を虜にしていた

 

PPAP!

彼はスマホを片手に陽気に踊り出した。

すごいぞショーヘイ。

「学校で流行っているの?」

「流行ってないよ。」

「学校のみんなはこの歌手(ピコ太郎)を知ってる?」

「知らないと思う。ぼくが好きなだけだよ。」

YouTube で見つけたそうだ。

 

彼だけがスマートフォンを持っているわけではない。

世界で何億もの人たちが持っている。

しかし、使い方は人それぞれだ。

私はネットよりも本を読んでいる時間の方が圧倒的に長い。

無限に存在する情報にアクセスできるにもかかわらず、彼のような使い方をしていない。

一方、彼はネットを利用して多言語を扱えるようになり、日本やアメリカの音楽シーンを楽しんでいる。

同じデバイスを持ちながら、その活用の仕方で身に付くものが大きく変わってくる。

スマホ1台あれば世界とつながっていて、使い方によってその人の未来が大きく変わると感じた。

私が言うのもなんだが、彼は上手な使い方をしているように思う。

将来間違いなく有利に働くときが来るだろう。

彼はそんなことは考えていないのかもしれないが。

 

私はショーヘイを通じてミャンマーのポテンシャルに気付いた。

彼は特別な学校に通っているエリートではない。

それでも語学のセンスは高いと認めざるを得ない。

学習する環境さえあればものすごい力を発揮するのではないかと思う。

いや、そんな環境がなくたって既に力を発揮している。

ミャンマーはすごい国なのかもしれない。

私はミャンマーとご縁が持てたことに感謝した。

 

将来日本へ行きたいというショーヘイが、ちゃんと日本とご縁が持てるように5円玉を渡そうと思った。

財布をゴソゴソしてみたが、こういう時に限って5円玉がない。

手元にあるのは100円玉。

「このコインは日本のお守りだ。これを持っていると日本に来ることができる。このコインにはそういう力がある。」

そう言って100円玉を渡した。

 

彼は文明の利器を上手に使いながら、彼らしいキャリアを築いていくに違いない。

頼もしい少年と出会った。

 

Author
この記事の執筆者
西ヶ谷紀之 【 国家資格キャリアコンサルタント・社会保険労務士・行政書士 】
弊社ホームページに掲載されている記事の内容は正確であるよう最善を尽くしておりますが、内容についての一切の責任を負うものではありません。予告なしに内容の変更又は削除をおこなう場合がありますのでご了承ください。また、弊社ホームページに掲載されている内容の著作権は、原則として株式会社葵マネジメントに帰属しますが、弊社に無断で転用、複製等することは大歓迎です。著作権法をご理解のうえ、バンバン拡散してください。

 

※ショーヘイが出ているYouTubeを見つけましたのでシェアします。

今ではすっかり有名人のようです。

 

 

 

外国人雇用については AOI の行政書士・社会保険労務士にお問い合わせください。

キャリアの専門家であるキャリアコンサルタント、入国管理法専門の行政書士、外国人雇用に精通した社会保険労務士、これらの資格を持つコンサルタントがご対応します。外国人を雇用する方法は一つではありません。まずは貴社の経営方針をお聞かせください。一緒に貴社に最適な雇用方法を見つけていきましょう。日本全国の企業様、是非お気軽にお問い合わせくださいませ。