喫茶店で働く少年たち in ミャンマー

ヤンゴンの喫茶店

ヤンゴンの喫茶店に入った。

ドアも窓もない開放的なお店だ。

もちろんエアコンはない。

弱々しく扇風機が回っているが暑い空気をかき混ぜているようにしか見えない。

観光客らしき人は見当たらず、みな地元の人たちのようだ。

 

ヤンゴン喫茶店

観光客がほとんど来ない喫茶店。

 

あとでそもそも観光客があまり来ないエリアだと聞いた。

11月だがとても暑い。

汗が噴き出てくる。

拭いても拭いても出てくる汗を拭っていると店員がオーダーを取りに来た。

少年だった。

年のころは9~11歳くらいだろうか。

チャイを注文すると、しばらくしてその少年がチャイを持って来てくれた。

通訳をしてくれているチョウさんを介して、一緒に写真を撮ろうと言ったら応じてくれた。

 

ヤンゴン喫茶店

喫茶店で働いている少年

 

握手をした。

穏やかな笑顔だ。

握手をした後、彼はしばらく我々の傍から離れなかった。

こんなときミャンマー語で話すことができたら…。

そう考えながら店内を見渡してみると、店員はほぼすべて子供たちであることに気付いた。

中央に大柄な女性がデンと座っていて、お客から受け取ったお金は必ずこの女性のところに集められる。

レジ係にしては存在感が大きい。

番頭さんのような存在か。

接客をする子どもの年齢は、だいたい小学生くらいだろうか。

10人ほどの子どもたちが働いていた。

 

この光景に違和感を持たない日本人はいないだろう。

でも、ミャンマーでは普通のことのようだ。

日本と違ってミャンマーでは「子は親のために働くもの」という考えがある。

何歳であっても、親のために子どもが働くことはごく自然なこと。

たとえ学校があったとしても仕事が優先される。

家庭の事情で働きに出ることは子どもの役割なのだ。

 

日本とミャンマーの違いについて、日本在住20年以上のチョウさんと話をした。

チョウさんの視点では、高齢者が働き続ける日本の現状に違和感を覚えるそうだ。

たしかに、そうかもしれない。

世界からみたら「1億総活躍社会」っておかしなことなのだろう。

よくよく考えたら、まるで戦前のスローガンではないか。

先進国でありながら、一生働き続けることを求められるなんて。

私たちの国は一体どこへ向かっているのだろうか…。

 

このように、外国にルーツを持つ人の視点によって、はじめて気づくことがある。

だからバックグランドの異なる人の意見はとても参考になる。

この喫茶店の光景を「児童労働」だと指摘することは簡単だ。

しかし、その国の事情や背景はその国ごとに異なる。

自国の物差しで他国を判断することは賢明ではない。

家族が家族のために、協力し合いながら生きているのだ。

 

さて、少年が運んできてくれたチャイである。

私にとってミャンマーのチャイは正直甘すぎた。

テーブルにはスイーツも置いてある。

これは食べた分だけ支払うシステムになっている。

スイーツは、カステラのような、パウンドケーキのような感じだが、少々油の量が気になる。

でも、これらは地元の人が愛している味なのだ。

チョウさんもこの甘さを愛していた。

誰かが愛しているものを無下にすることはできない。

甘すぎるチャイも、甘すぎるスイーツも、ありがたくいただいた。

幸い、テーブルにはミャンマーのお茶が入ったポットも置かれていた。

こちらは無料だということで何杯かいただいた。

やや薄めのウーロン茶のような味わいだ。

いささか取り過ぎた糖分を、このお茶が薄めてくれることを期待して杯を重ねた。

 

少年たちの未来

私は再び働く少年たちの方へ視線を向けた。

きっと彼らは家庭の事情があって働いているのだろう。

もしかしたら、働いているという認識すらないのかもしれない。

ただ家族を助けようとの思いだけなのかもしれない。

彼らには、家庭での役割、そして喫茶店での役割がある。

役割を与えられ、その役割を認識し、その役割を全して人の役に立つ。

仕事をする上で極めて大切なことを、幼い彼らは既に学んでいる。

だから、彼らにはお仕着せのキャリア教育は必要ない。

 

彼らの働く姿を眺めながら、私はある本のことを思い出していた。

日本理化学工業株式会社の会長である大山泰弘さんの『人生とは、人の役に立つこと』という本だ。

副題は「働くしあわせ」である。

著者の大山さんによると人間の究極の幸せの要素は4つあるそうだ。

  • 人に愛されること
  • 人にほめられること
  • 人の役に立つこと
  • 人から必要とされること

これらは、働くことによって得られるのだと大山さんは記している。

資本主義社会の謎である、お金と幸せの関係について考えさせられる。

なぜ、たくさんのお金をもらっているのに、幸せを感じられない人がいるのか?

なぜ、それほどお金をもらえていないのに、幸せを感じられる人がいるのか?

この4つの要素はとても示唆に富むものだ。

 

喫茶店で働く少年たちである。

もしかしたら、彼らは既に人間の究極の幸せを得ているのかもしれない。

まだまだ産業が未成熟なこの国で、彼らは先進国の人たちでさえ得ることが難しいものを既に得ている可能性がある。

幸せは、人から必要とされ、人の役に立つことで得られる。

幼い彼らは、キャリアコンサルタントである私に、働くことの原点を教えてくれた。

 

 

Author
この記事の執筆者
西ヶ谷紀之 【 国家資格キャリアコンサルタント・社会保険労務士・行政書士 】
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